ジョージ・フロイドさんの死から、アメリカでは多くの抗議活動が広がっています。
私はアメリカに住んでおり実際に抗議活動に参加し、人種差別について深く考える機会が多くなりました。
日本の環境では、どうしてもこのテーマが身近ではなく理解が乏しくなりがちです。
そんな中、このテーマを描いた映画はたくさんある事に気づき、私自身も理解を深める事ができたので、今日はおすすめの映画や作品をここで紹介したいと思います。
ヘイト・ユー・ギブ
The Hate U Give , 2018年 , 132分
今アメリカで起こっている抗議活動が、どのような背景でされているのかを知りたくてこの記事を参照いただいているのなら、この映画1つで十分伝わります。
ストーリー自体はフィクションですが、2009年カルフォルニアで起こった無抵抗の黒人青年を警官が射殺した「オスカー・グラント事件」をヒントに書かれたベストセラー小説の映画化です。
幼馴染みが白人警官に自分の目の前で射殺される、白人社会と共存していく方法を小さい時から教えられてきた16歳の黒人少女の葛藤と勇気の物語。
私はつい最近この映画を見ました。
映画を見ながら涙が止まらず、久々に嗚咽をもらすほど泣いてしまいました。
ここに出てくる映像は、まさに今ニュースで流れているものと全く同じことが起こっていると感じ、先日私もロサンゼルスにて抗議に参加したのですが、全く同じ事を言って来ました。
もし、黒人社会の事をあまり知らずに映画を見ると、こんな事あり得ない、大袈裟すぎると感じてしまうかもしれません。
でも全く大袈裟でも何でも無く、これと同じ事が彼らに、何度も何十年もの間、起こっています。
本来は当事者にしか分からないであろう、悲しみと憎しみが、渾身の演技と作品のクオリティの高さから伝わり、悲しみ憎しみの感情に揺れ動かされ、そして勇気をもらいました。
ボーイズ’ン・ザ・フッド
Boyz n the Hood , 1991年 , 112分
こちらは1991年の作品ではありますが、色あせず、この映画から伝わるメッセージは強烈です。
ロサンゼルスのサウス・セントラル地区で育った黒人の青年達のストーリー。
人種差別、貧困、ギャングによる暴力、などの社会問題を描いた作品。
この作品自体はフィクションだけど、背景や社会問題は当時のリアルなアメリカを描いている。
映画でもあったように、サウス・セントラルで怒っているような黒人同士の殺し合いは、当時報道すらされていなかった。
この映画が公開された当時の反応は、これが本当にアメリカで起こっている事なの?と、広いアメリカではこの事実を知らずに驚く人々が多かったそうです。
ストレイト・アウタ・コンプトン
Straight Outta Compton , 2015年 , 147分
今回の事件後に、ブラックカルチャー好きのアメリカ人の彼がアメリカはこの数十年何も変わって無いと嘆きながら、私にアメリカの悲劇を知れと言わんばかりに一緒に見た映画でした。
イージー・イー、ドクター・ドレー、アイス・キューブなどによる伝説的ヒップホップ・グループ、N.W.Aの結成から脱退、再結成までを描いた伝記的音楽映画。
私は、あまりヒップホップに詳しくないのでアイス・キューブくらいしか知らなかったのですが、レジェンドらしいです。
(2パックとか、エミネム、50セントの前のレジェンド。N.W.Aがいなければ彼らの音楽もなかったというくらい!)
当時のギャングやブラックカルチャーは、平和な日本でぬくぬくと生きた私には衝撃的過ぎて、147分と長編ですが、ハラハラと見入ってしまうほどの映画です。
この映画でアイス・キューブを演じているのは彼の長男です。
先に紹介した「ボーイズ’ン・ザ・フッド」には、アイス・キューブも出演していました。この2つの映画を続けて見ると、この親子そっくりすぎてびっくりします。それも見どころです。
マイケル・チェの要チェック
Michael Che Matters , 2016年 , 60分
こちらは、一風代わって映画ではなくスタンドアップコメディの紹介です。
マイケル・チェは、2016年に「サタデー・ナイト・ライブ」脚本家チームの1人として、エミー賞にノミネートされたこともあるコメディアン。
2016年に収録されたスタンドアップコメディなので、ゴリラ射殺のニュースなどいくつか当時のアメリカニュースを知らないとコメディとして楽しめない部分も少しだけあり、かつトランプ政権前なので、状況は違う部分もありが今見ても十分面白い作品です。(マイケルは現在トランプのことは大嫌いです。)
多くの黒人差別問題を毎日ニュースで目にしている、今、これを見ると、非常に胸が痛くなることもありましたが、コメディの視点で見るのもおすすめです。
この作品が見れるVOD
Netflixブラック・クランズマン
BlacKkKlansman , 2018年 , 128分
差別の歴史を知る中では、KKKの存在も理解が必要です。それにはこの映画がおすすめです。
1970年代に実際に行われたKKKへの潜入捜査の話を元に作られた映画。
コロラド・スプリングズで、黒人初の市警察巡査になった論が、白人至上主義団体クー・クラックス・クランの地方支部への潜入捜査に着手し、活動内容や極秘計画を暴くまでが描かれている。
監督のスパイク・リーは、黒人の社会問題について多くの作品を生み出している人物です。
アメリカは人種差別が得意だが、人種差別は世界中にある。人種差別がコロナウイルスより先の、世界的パンデミックだ。
スパイク・リー
ズートピア
Zootopia , 2016年 , 108分
ここまで、いくつかの作品を紹介してきましたが、少しソフトに人種差別について考える事ができる映画を紹介します。
ディズニー映画なので、子供に人種差別について伝えたい方にもおすすめの映画です。
肉食動物と草食動物が共に暮らす大都会「ズートピア」を舞台に、夢を信じる新米ウサギ警察官ジュディ・ホップスと、夢を忘れたキツネ詐欺師ニック・ワイルドの2人を主人公に据え、連続行方不明事件を解決する中で変わってゆく2人の関係を軸に、その中であぶり出される人種差別や欺瞞などといった大都市の社会問題を描いている。
wikiより
さすがディズニー、大好きな映画です。
ドリーム
Hidden Figures , 2016年 , 127分
アメリカ南部で依然として白人と有色人種の分離政策が行われていた時代に、NASAで活躍した3人の黒人女性のストーリー。
実在の人物の話をベースに作られた映画です。
白人と有色人種で分けたトイレなどの差別を目の当たりにし、やるせなく思いながらも、同時に厳しい逆境に立ち向かう女性達が活躍すがたに感銘を受けた映画です。
ジャンゴ 繋がれざる者
Django Unchained , 2012年 , 165分
黒人差別問題の根底は南北戦争前の奴隷時代にあり、その時代を描かれた映画作品はいくつかある中、この作品を選びました。
アカデミー賞では5部門ノミネート、内、脚本賞と助演男優賞を受賞したクエンティン・タランティーノの映画。
「僕はずっと、このアメリカのヒドい過去である奴隷問題を扱った映画を製作したいと思っていたが、歴史に忠実な映画にはしたくなくて、ジャンル映画として描きたいと思っていた。特にアメリカのウエスタン作品は、極端に奴隷問題を避けて描いてきた作品が多かった。海外の国は強制的に過去に犯した残虐行為に対して、国ごとに対処しなければならなかったが、どこかアメリカはこの奴隷問題に関しては、みんなの過ちとして捉え、誰もしっかりと、この問題を見つめていないと思う」
クエンティン・タランティーノ
南北戦争直前のアメリカ南部、黒人奴隷ジャンゴの銃の才能に気づいたドイツ人賞金稼ぎのシュルツが、彼を相棒にし賞金稼ぎをする。
黒人を奴隷として酷使する姿や、残酷な仕打ちが描かれているので、非常に胸が痛いシーンが多くありますが、この時代を知らずにして人種差別を理解することはできないので、今回リストに入れました。
リズム+フロー
Rhythm + Flow , 2019年 , 全10エピソード
最後にお気に入りのリアリティショーの紹介です。
人気のヒップホップアーティストが、ストリートで輝く逸材を発掘するオーディション番組。
審査員はT.I.、カーディ・B、チャンス・ザ・ラッパー。
そのほか、スヌープ・ドッグ、クエイヴォ、DJキャレド、アンダーソン・パーク、ニプシー・ハッスルら、ヒップホップ界の重鎮が審査に協力。
ヒップホップ好きには一押しのリアリティショー。好きでない方にも是非見てほしい。
悲惨なバックグラウンドを持ちながらも、ストリートで生き抜くラッパーたちがハングリーにチャンスを掴みに躍起する姿に勇気をもらいます。
何度も胸が熱くなり、彼らを応援したくなりました。後半は、オーディション番組と言えど、プロフェッショナルなステージばかりで圧倒されます。
とにかくクールでドープ。
そして、今の黒人社会で生きる、生の若者の姿を見る事ができます。
ダークな映画の紹介が多かったので、これを見てテンション上げていきましょう!
この作品が見れるVOD
Netflix最後に
最後まで読んでいただきありがとうございます。
日本の環境だと他国ほど人種差別について考えることは少ないと思います。
だからと言って、無視して良い問題ではないと思っています。
知らなかったから、黒塗りメイクをしてしまった。では済まされないです。
これを見て傷つく方がどれほどいるのかを知る事は、ダイバーシティを謳う前にやるべき事だと思っています。
先日、ロサンゼルスで行われた抗議活動に参加してきました。
多くの抗議プラカードに、
「Black Lives Matter」や
「No Justice No Peace(正義なくして、平和なし)」だけでなく
「silence = violence(沈黙 = 暴力)」
「Ignorance is a crime(無知は罪なり)」
と訴えるかたも見ました。
本当に、見てみぬふりはいけないし、理解しない、知らないこともよくないと思いました。理解のきっかけとして、映画を見ることはおすすめです。
確か、マイケル・チェが言ってたストーリー。
子供の頃に、買い物に行った時に警備員を目の前に母親が言った。
スーパーに入ったら絶対にポケットに手を入れるんじゃないよ!買う必要のない物は絶対に触るんじゃないよ!
あの警備員は、あんたが万引きをする前提で見張っているんだから、絶対に疑われるような事をするんじゃないからね!
ヘイト・ユー・ギブの映画の冒頭も同じような話から始まります。
黒人の親が子供に教えなければいけない事、この話を聞くといつも切なくなります。
今回抗議の後、アメリカの変化も感じています。
ミネアポリスでは警察を解体し再建する事が決まりました。
ホワイトハウスの目の前には、Black Lives Matter streetという名前がつけられた道ができました。
SNSにアップされた行き過ぎた人種差別行為をした人が、次々と逮捕されたり、解雇されたりしています。
これを期に、アメリカは変わったとなる事を祈り期待し、私自身も意識を変え行動して行きたいと思います。